1. 原価管理ってなに?
  2. 原価管理の手法にはどんなものがあるの?
  3. 原価管理は、原価の把握から始まる
  4. 実際原価計算制度ってなに?
  5. コスト削減のための標準原価計算制度ってなに?
  6. 利益と業績改善のための直接原価計算制度ってなに?

 

 

原価管理ってなに?

原価管理とは、長期的な視点にたって原価を測定し、測定した原価を分析し、その分析結果を受けて、利益や業績の改善に役立たせるために入念な原価の管理計画をたて、その管理計画どおりに物事がはこんでいくようにしてやるプロセスをいい、具体的には、原価の管理原価による管理の2つの分野からなります。

1)原価の管理とは

原価の管理とは、原価の目標をたてて、この目標原価と実際原価とを比較して、その差異を分析し、差異の原因を分析検討することにより、経営プロセスや作業効率等の改善につなげ、その結果としてコストダウンを図ることを言います。つまり原価の管理は、目標とする原価水準にまで技術的に引き下げようとする活動(原価低減努力)と、技術的に引き下げられた目標とする原価水準を維持しようとする活動(原価統制努力)とからなります。

2)原価による管理とは

原価による管理とは、利益や業績の改善を目的とし、利益の獲得に貢献しない{コスト}を見極めて、これらのコストを除去あるいは回避するための一連のアプローチを言います。従って、一連のアプローチの中で長期的視点に立って利益や業績の改善を指向するのが原価による管理です。

 

原価管理の手法にはどんなものがあるの?

原価管理の手法には、原価管理の分野によって以下のような手法があります。

1)原価の管理を目的とする手法

原価の管理を目的とする分野では、コストの削減(低減)が主目標となりますから、このような目的をもつ原価の管理では、目標原価と実際原価との差異分析を通じて、コスト削減を実現しようとする標準原価計算制度が採用されるのが普通です。

 

2)原価による管理を目的とする手法

原価による管理を目的とする分野では、操業度等に対応して発生する変動費だけを原価として把握し、その原価と利益の関係を分析することで利益や業績の改善につなげようとする直接原価計算制度が採用されるのが普通です。
 

 

原価管理は、原価の把握から始まる

上記(1)、(2)で明らかになったように原価管理には2つの分野があり、それぞれの目的に応じた原価管理手法が採用されています。即ち、コスト削減目的にしても、利益や業績の改善目的にしても、実際にかかった原価を把握しないことには、コストダウンもコストマネジメントもままなりません。従って、原価管理は、まず実際にかかった原価計算(原価把握)から始まるのです。その原価の把握手法を、実際原価計算制度と呼んでいます。
 

 

 

実際原価計算制度ってなに?

実際原価計算制度とは、製造業の場合、製品を製造するのにかかった製造原価を把握するための計算手法をいい、一般的には費目別(材料費、労務費、経費)にかかった総額を完成品に費やされた原価と製造途中にある仕掛品とに割り振り、完成品1個あたりにいくらかかったかを把握する計算制度をいいます。
ここでは、ブリ、フグ、マダイの3魚種を育成する架空の養殖業者を例にして魚種別の実際原価を算出してみます。

1)実際原価計算に必要なデータ

原価を計算するためには、まず実際にかかった費目ごとの生産データと発生原価データを把握する必要があります。各データは、以下の通りと仮定します。


<生産データ>

  ブリ フグ マダイ
生産数量(t) 125 65 418
出荷数量(t) 91 20 108
期末在庫数量(t) 24 45 310
餌投入量(t) 430 210 1,047
作業時間(時間) 3,114 2,240 2,720
係わった人員(人)   2 1 5

 

<原価データ 変動費> 単位:円

  ブリ フグ マダイ
飼料費 43,000,000 21,000,000 108,547,967
稚魚仕入高 2,940,000 2,940,000 9,775,000
薬品費 9,909,000 3,000,000 3,247,450
消耗品費 3,250,000 3,250,000 10,841,065
燃料費 902,000 129,8000 2,259,276
その他の変動費 48,400 1,525,000 3,030,520

 

<原価データ 固定費> 単位:円

  ブリ フグ マダイ
人件費 42,663,982 30,493,715 22,156,256
販売促進費 1,838,032 1,838,032 4,973,288
管理費 4,600,000 4,000,000 16,294,417
その他の固定費 0 0 5,107,087

 

<販売データ> 単位:円

  ブリ フグ マダイ
売上高 74,937,389 74,937,389 81,000,000

変動費

変動費とは、生産量(育成量)の大きさに応じて変化する費用で、飼料費、稚魚仕入高、薬品費、消耗品費、燃料費等があげられます。これらの費用は、魚種別に直接認識できる費用で、直接費と呼ばれる事もあります。

固定費

固定費とは、生産量(育成量)に関係なく一定の生産能力(人員、生簀、養殖設備等)を維持する限り、必然的に発生する費用です。これらの費用は、魚種別に直接認識できない費用がほとんどで、間接費(共通費)と呼ばれる事もあります。

直接費

魚種別に直接認識できる費用(主として変動費)は、投下した費用を魚種別の原価として集計し、計算します。直接材料費、直接労務費、直接経費と呼ばれる費用です。


間接費(共通費)

魚種別に直接認識できない費用(主として固定費)は、それぞれ費用毎に把握した期間費用(1か月、又は1年間の合計額)を適当な配賦基準によって魚種別に配賦します。配賦基準としては、直接原価、作業時間、生産数量、出荷数量などの合理的な基準を間接費の発生態様に即して決定します。

 

2)原価の計算方法

<魚種別原価計算表> 単位:円

  ブリ フグ マダイ


材料費 2,940,000 2,940,000 9,775,000
労務費 42,663,982  30,493,715 22,156,256
経費 3,250,000  3,250,000 10,841,065


材料費 43,000,000  21,000,000 108,547,967
労務費 0 0
経費 10,811,000  4,298,000 5,506,726
当期総製造費用 102,664,982 61,981,715 156,827,014
期首育成原価 20,000,000 30,000,000 139,650,000
期末育成原価 19,758,117 37,628,883 126,247,080
当期育成原価 102,906,865 54,352,832 170,229,934
単位育成原価(t) 823,254 836,197 407,248
出荷原価 74,916,114 16,723,940 43,982,784

 

直接材料費

  1. ブリ-------稚魚仕入高2,940,000
  2. フグ-------稚魚仕入高2,940,000
  3. マダイ---稚魚仕入高9,775,000

 

直接労務費

  1. ブリ-----人件費42,663,982
  2. フグ-----人件費30,493,715
  3. マダイ---人件費22,156,256
    注)人件費は固定費ですが、ここでは魚種別に認識できると仮定します。

 

直接経費

  1. ブリ-----消耗品費3,250,000
  2. フグ-----消耗品費3,250,000
  3. マダイ---消耗品費10,841,085
     

 

間接材料費

  1. ブリ-----飼料費43,000,000
  2. フグ-----飼料費21,000,000
  3. マダイ---飼料費108,547,967
    注)飼料費は変動費ですが、ここでは魚種別に認識できない間接費と仮定します。

 

間接経費

  1. ブリ-----薬品費9,909,000+燃料費902,000=10,811,000
  2. フグ-----薬品費3,000,000+燃料費1,298,000=4,298,000
  3. マダイ---薬品費3,247,450+燃料費2,259,276=5,506,726
    注)その他の変動費、販売費促進費、管理費、その他の固定費は、販売費及び一般管理費として処理されると仮定します(育成コストを構成しないと仮定します)。従って、これらの費用は原価計算の対象となりません。

 

当期総製造費用

ブリ、フグ、マダイそれぞれの材料費、労務費、経費の合計額(直接費及び間接費の合計額)です。

 

期首育成原価

前期末までに出荷されずに当期に繰り越されたブリ、フグ、マダイのそれぞれ育成原価です。それぞれの数値で繰り越されたと仮定します。

期末育成原価(棚卸計算法として総平均法を選択したと仮定します)
期末育成原価=(期首育成原価+当期総製造費用)×{期末在庫数量÷(生産
数量+期末在庫数量)}で計算されます。
 

  1. ブリ
    (20,000,000+102,664、982)×{24t÷(125t+24t)}
    =122,664,982×0.1610738255=19758117(円未満切捨て)
  2. フグ
    (30,000,000+61、981、715)×{45t÷(65t+45t)}
    =91,981,715×0.40909090909=37,628,883(円未満切捨て)
  3. マダイ
    (139,650,000+156,827,014)×{310t÷(418t+310t)}
    =296,477,014×0.42582417582=126,247,080(円未満切捨て)

 

当期育成原価

当期育成原価=期首育成原価+当期総製造費用−期末育成原価で計算されます。従って、ブリ、フグ、マダイの当期育成原価は、この計算式に当てはめると魚種別原価計算表の数値通りになります。

 

単位育成原価

単位育成原価=当期育成原価÷当期の生産数量で計算されます。従って

  1. ブリ-----102,906,865÷125t=823,254(円未満切捨て)
  2. フグ-----54,352,832÷65t=836,197(円未満切捨て)
  3. マダイ---170,229,934÷418t=407,248(円未満切捨て)
     

出荷原価

出荷原価=t当りの単位育成原価×出荷数量で計算されます。従って

  1. ブリ-----823,254×91t=74,916,114
  2. フグ-----836,197×20t=16,723,940
  3. マダイ---407,248×108t=4,398,2784
     

以上のように、魚種別(ブリ、フグ、マダイ毎)に一尾(単位)当りの実際の育成原価が算出された事になります。原価管理は、この実際原価の発生態様を分析することから始まります。即ち、養殖業の場合、材料費(飼料費等)分析で、エサの種類、エサの作り方、エサの与え方、給餌量、エサを与える時間帯、海温と食いの状況等を見極め、また労務費分析で魚ごとの養殖仕様や作業方法等を見極めて作業手順の標準化を図ったり、経費分析で水質管理や病気対策を見極めたり、魚の死亡率を減らし歩留まりを高めるために生簀ごとの適正放養量を検討したりします。このように、実際原価をしっかりと計算把握して実際原価を分析する事が、原価管理の第一歩です。

 

 

 

コスト削減のための標準原価計算制度ってなに?

景気低迷が当たり前の時代、コストダウンの必要性を意識しない経営者はまずいないと思います。コストダウンは原価を引き下げる事ではありますが、コストの引き下げは、本来取り組むべき経営プロセスや業務の時代適応という改善が実現されて、結果としてもたらされるものでなければ、コスマネジメントの目的である利益や業績の改善には結びつきません。数値それ自体の低減が、目的であってはならないのです。ここで説明するコスト削減のための標準原価管理も、伝統的な原価管理手法ではありますが、部門管理者レベル、作業者レベルそれぞれにおいて、コスト削減を図るための業務プロセスの改善に、活用してもらいたいものです。

1)標準原価の考え方

一般的に標準原価とは、科学的な分析に基づいて得られた原価標準の設定から導き出された目標原価を言います。要するに、原価を削減するためには、単なる成り行きから算出された目標数値ではなくて、計画的に設定された課業目標を割り当て、その作業結果を科学的に測定、評価した標準原価を目安として、コスト削減に取り組みましょうと言うものです。

 

2)標準原価の設定

実際原価計算制度で例にとった養殖業者を前提に、標準原価の設定を考えます。一般的に、標準原価は、直接費と間接費とに分けて設定されます。もちろん科学的な分析に基づいて設定されなければなりませんが、ここでは科学的な分析を、把握収集した実際原価のデータ分析と置き換えて考えます。
事例に取り上げた養殖業の場合、直接費は、稚魚仕入高、人件費、消耗品費です。一方間接費は、飼料費、薬品費、燃料費です。説明を分かりやすくするために、今回のコスト削減費目は、直接材料費である稚魚仕入高、直接労務費である人件費 、製造間接費である燃料費とします。

直接材料費(稚魚仕入高)の標準原価

これまでデータ集積した稚魚仕入高に関する購入価額、購入数量、購入時の大きさ、購入時の魚体サイズによる歩留り率、薬品投与回数、給餌量、育成月日、並び購入予算等の分析、評価結果から見極めした目標購入価額と目標購入数量が決定されれば、
直接材料費の標準原価=目標購入価額×目標購入数量となります。

 

直接労務費(人件費)の標準原価

養殖魚の育成に必要な作業の種類、使用生簀、作業方法、段取り手順、各作業に従事する人員の熟練度、作業種類別の時間等について収集したデータの分析、評価に基づいて目標賃率と目標作業時間が決定されれば
直接労務費の標準原価=目標賃率×目標作業時間となります。
 

 

製造間接費(燃料費)の標準原価

これまでデータとして集積してきた燃料費に関する実績の分析、評価を前提に、適正な燃料費予算が決定されれば、
製造間接費の標準原価=目標予算額となります。

 

3)原価差異の分析

標準原価に基づく原価管理では、事後に実際に把握された原価(実際原価)と
標準原価を比較し、差異分析を行う事によって、それぞれの費目毎のコスト削減努力を査定、評価します。

直接材料費差異分析

  1. 数量差異=
    {標準(目標)購入数量−実際購入数量}×標準(目標)購入価額
  2. 価額差異=
    {標準(目標)購入価額−実際購入価額}×実際購入数量

 

直接労務費差異分析

  1. 時間差異=
    {標準(目標)作業時間−実際作業時間}×標準(目標)賃率
  2. 賃率差異=
    {標準(目標)賃率−実際賃率}×実際作業時間

 

製造間接費差異分析

  1. 予算差異=標準(目標)予算額−実際製造間接費発生額


以上のような各原価差異の原因としては、以下のようなものが考えられます。

 

原価差異の種類 管理可能な原因 管理不能な原因
数量差異
  1. 不良又は不適切な稚魚の仕入れ
  2. 運搬上の死亡
  3. 育成上での盗難損失や病気による死亡
  1. 予期不能の災害等による損失
  2. 標準(目標)購入量の設定誤り
価格差異
  1. 購入先の選定誤り
  2. 購入方法の不的確
  3. 市場価額の見込み誤り
  1. 市場価額の急激な変動
  2. 標準(目標)価額の設定誤り
作業時間差異
  1. 作業者の交替頻度
  2. 作業者の労働意欲
  3. 作業仕様や作業条件
  1. 作業者の選択,訓練,配置の不適
  2. 養殖生簀等の選択誤り
賃率差異
  1. 予定外の賃率労働者の使用
  2. 想定時間外の高賃金支払
  1. 賃金体系の変更
  2. 標準(目標)賃率の設定誤り
予算差異
  1. 製造間接費の浪費
  1. 間接費要素の価格変動

 

このように原価差異原因を分析、調査し、その結果を是正活動に結びつける事で原価管理上の責任と範囲を明確にして、コスト削減を図ろうとするのが、標準原価計算制度による原価管理です。

 

 

 

利益と業績改善のための直接原価計算制度ってなに?

原価管理は、原価の改善(原価の引下げも原価改善の一手法に過ぎません)を目的とします。従って、標準(目標)原価に対して、一定時点における実際原価との乖離差を分析して、その未達部分に対する改善活動(原価低減活動)を上手く機能させる手法として、標準原価管理が大きな役割を担ってきました。ところが、近年、原価管理も、利益と業績の改善という視点から捉えられるようになり、将来の一定期間にどのような経営活動を行い、どれだけの必要利益を確保するか、そのためには許容原価はいかほどなのかといった予算編成と連動して実施される原価管理へと変貌してきています。つまり、原価管理も将来の一定期間に計画された予算利益目標達成の手段として位置づけられるようになったのです。このような位置付けの原価管理手法として、直接原価計算制度が登場する事になりました。

1)直接原価計算制度とは

直接原価計算制度とは、発生する原価を直接原価(変動費)と期間原価(固定費)に分類し、売上活動に直接影響する直接原価だけを売上高に対応させて控除し、その結果として売上総利益(直接原価計算上、限界利益といいます)を計算し、これから期間原価(売上げ活動に直接影響しない原価をいいます)を控除して経常利益(直接原価計算上、貢献利益といいます)を算定する損益計算方式をもって分析、管理を行う原価計算技法を言います。直接原価計算制度は、原価、操業度(生産量、販売量、作業時間等によって表現されます)、利益の関係を分析する損益分岐点分析を前提として構築された原価計算システムであるところから、利益改善のための原価管理手法という役割を担っています。

 

2)直接原価計算の事例

先の養殖業者の事例を前提に、魚種別直接原価計算表を作成して見ます。

単位:円

  ブリ フグ マダイ
売上高 74,937,389 74,937,389 81,000,000



飼料費 43,000,000 21,000,000 108,547,967
稚魚仕入高 2,940,000 2,940,000 9,775,000
薬品費 9,909,000 3,000,000 3,247,450
消耗品費 3,250,000 3,250,000 10,841,065
燃料費 902,000 1,298,000 2,259,276
その他 48,400 1,525,000 3,030,520

直接原価合計

60,049,400 33,013,000 137,701,278

限界利益

14,887,989 41,924,389 △56,701,278



人件費 42,663,982 30,493,715 22,156,256
販売促進費 1,838,032 1,838,032 4,973,288
管理費 4,600,000 4,000,000 16,294,417
その他費用 0 0 5,107,087

直接原価合計

49,102,014 36,331,747 48,531,048

経常利益

△34,214,025 5,592,642 △105,232,326

上記の魚種別直接原価計算表を前提に、各種のデータを分析して見ます。

 

材料生産性

  ブリ フグ マダイ
出荷(t)当たり直接原価率 80.1% 44.1% 170%
餌効率 29.1% 30.9% 39.9%
飼料費率 57.3% 28.0% 134.0%

出荷(t)当たり直接原価率=直接原価合計÷売上高
餌効率=生産数量÷餌投入量
飼料費率=飼料費÷売上高

 

労働生産性

  ブリ フグ マダイ
一人当たり売上高 37,468,694円 74,937,389円 16,200,000円
一人当たり付加価値 7,443,994円 41,924,389円 △11,340,255
労働分配率 286.5% 72.7%

一人当たり売上高=売上高÷従業員数
一人当たり付加価値=限界利益÷従業員数
労働分配率=人件費÷限界利益

 

設備生産性

  ブリ フグ マダイ
労働装備高 46,000,000円 80,000,000円 26,800,000円
装備加工率 16.1% 52.4% △42.3%
償却費分配率 30.8% 9.5%

労働装備高=有形固定資産価額÷従業員数
装備加工率=限界利益÷有形固定資産価額
償却費分配率=減価償却費÷限界利益

(注1)有形固定資産価額を
    ブリ------92,000,000円
    フグ------80,000,000円
    マダイ----134,000,000円と仮定します

(注2)生産設備(生簀、船舶、養殖設備等)の減価償却費を
    ブリ------4,600,000円
    フグ------4,000,000円
    マダイ----6,700,000円と仮定します。

 

販売生産性

  ブリ フグ マダイ
販売費率 12.3% 4.3%

出荷(t)当たり限界利益 163,604円 2,096,219円 △525,011円
自己資本貢献利益率   △17.1% 2.7% △52.6%

販売費率=販売促進費÷限界利益
出荷t当たり限界利益=限界利益÷出荷数量
自己資本貢献利益率=貢献利益÷自己資本
魚種別の貢献度ただし、事例業者の自己資本を200,000,000円と仮定します。

 

魚種別の貢献度

  ブリ フグ マダイ
売上構成比 32.4% 32.4% 35.0%
限界利益率 19.8% 55.9% △70.0%
魚回転率 3.7回 1.9回 0.6回
交差主義比率   73.2% 106.2% △42.0%
貢献度 0.237 0.344 △0.147

売上構成比=魚種別売上高÷売上高合計
限界利益率=魚種別限界利益÷魚種別売上高
魚回転率=魚種別売上高÷魚種別期末育成原価
交差主義比率=魚種別限界利益×魚種別魚回転率
貢献度=魚種別売上構成比×交差主義比率

 

3)各種のデータ分析で分かること

ブリの取り扱い

貢献度が0.237で、3種類の魚の中では2番目です。2番目の甘んじている原因は、魚回転率が3.7回と最も高いにもかかわらず、限界利益率が9.8%と上位の魚種に比べて低い事にあります。この点ついては、出荷当たりの直接原価率、飼料費率、販売費率が高い事からも裏付けられています。特に、単位当たりの限界利益が163,604円と低いのは問題です。魚種別の直接原価計算表で明らかなように、直接原価と期間原価の圧縮を実現して、貢献利益の改善を目指すべきです。そのためには、出荷ロスの排除、設備の有効利用、成果に見合う配分(労働分配率が286.5%もあります)、作業管理を徹底しなければなりません。

フグの取り扱い

貢献度が0.344で3種類の魚の中では最も貢献している魚種といえます。限界利益がNo1の魚ですが、売上構成比は思ったほど高くないことが貢献利益を稼げてない原因のようです。限界利益がNo1である裏づけとして、設備加工率や一人当りの付加価値の高さ、飼料費や薬品費等の直接原価率の低さ、及び販売費率の低さがあげられます。魚種別直接原価計算表からも明らかなように、最も稼いでいる魚種であり、マーケットシェアの拡大努力が成功すれば、この養殖業者を支える花形魚種へ移行する可能性が高いと言えます。

マダイの取り扱い

貢献度がマイナス0.147で唯一赤の魚種です。魚種別の直接原価計算表から見ても、貢献損失を計上し限界利益すら出せていない状況です。材料生産性、労働生産性、設備生産性、販売生産性等、どの分析データを見ても、好ましいデータは見出せません。したがって事業者としては、今後この魚種の養殖を続けるべきか否かの判断をすべき時期に来ていると思われます。販売先、販売価額、市場占有率等において見通しがたたないのであれば、勇気ある撤退の決断も必要です。

 


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