1. 利益管理ってなに?

  2. 利益計画

  3. 利益統制

  4. 資金管理ってなに?

  5. 損益と資金の違い

  6. 損益と資金の違いまとめ

  7. 資金のつかみ方

  8. 資金のチェックポイント

企業の財務管理とは、主として利益管理と資金管理の事を言います。

利益管理ってなに?

 
(1)利益管理の意義と必要性
1)利益管理の意義
利益管理とは利益計画と利益統制を言います。利益計画とは、次の期間の売上高を予測し、次の期間にあげるべき必要利益を算定し、算定した必要利益(目標利益)を達成すべき売上高と費用を計画することを言います。
また、利益統制とは担当部門の動機付けと差異分析を言い、動機付けとは担当部門の各担当者が進んで目標利益を達成しようとする意欲を持たせるよう指揮監督することであり、差異分析とは目標と実績との差異を分析検討することを言います。

2)利益管理の必要性
 利益管理、即ち利益計画と利益統制が必要とされるのは、利益が次のような意味を持っているからです。

  1. 利益は、企業活動が有効・健全であったかどうかを測定する尺度になるという機能を持っていること。
  2. 利益は、将来生ずる危険(費用)を補償して、企業の維持存続を図るという機能を持っていること。
  3. 利益は、企業の革新と成長に必要な資金を生み出すという機能を持っていること。

即ち、企業の維持発展のために、企業に伴う危険を補償し、企業の革新と安定を達成して行くために必要な利益を生み出すための具体的な計画(利益管理)が必要とされるのです。

 

(2)利益管理の基礎
利益管理とは、利益計画と利益統制だと言いましたが、利益のための計画決定に有効な方法として使用されているのが、損益分岐点分析という手法です。

1)損益分岐点分析とは
 損益分岐点分析とは損益分岐点を求めて利益管理をする方法を言います。

  1. 損益分岐点とは
    損益分岐点とは費用が収益によって回収される採算点を言います。即ち、利益も損失も生じない売上高を示す点をいう事になりますが、売上高、費用、利益の関係を通して操業度が変化した場合に費用や売上高、利益がどのように変化するのかを見るのが損益分岐点分析ということになります。
     
  2. 変動費と固定費
    損益分岐点分析では費用を固定費と変動費に分類します。

    A)変動費
    変動費とは操業度(売上高)の増減に応じて、総額で比例的に発生する費用をいい、材料費・外注費・出来高払賃金・仮設材料費・消耗品費等が変動費に属する代表的な費用と言うことになります。

                   


    B)固定費
    固定費とは操業度の増減にかかわらず総額では、変化しない費用を言い、操業度(売上高)とかかわりなく期間に一定額発生する費用を言います。固定費には、減価償却費、固定資産税、火災保険料、賃借料、賃金、退職金、広告宣伝費、地代家賃、租税公課、接待交際費、管理諸費、車両経費等があります。
                   
     
  3. 変動損益計算
    損益分岐点分析では、従来の全部損益計算とは違い、変動損益計算を行います。
     
    <全部損益計算>   <変動損益計算>
    T売  上  高 ×××   T売上高 ×××
    U売 上 原 価 ×××   U変動費 ×××
    (売上総利益) ×××   (限界利益) ×××
    V販売費及び管理費 ×××   V固定費 ×××
    (営業利益) ×××   (営業利益) ×××

    (事例T)A社の当月(8月)の生産量6,000個の製造原価は以下の通りです。
     

    材料費 1,000円×6,000個=6,000千円  
    労務費 5,000千円 15,000千円
    経 費 4,000千円  

    また、販売単価は、1個あたり4,000円で当月(8月)の1個あたりの製品原価は15,000千円/6,000個=2,500円です。
    尚、8月の販売数量は4,000個で販売費及び管理費は5,000千円ですが、月初の製品在庫はゼロ、工程途中の仕掛品は月初・月末共になしと仮定します。
     
    <全部損益計算>   <変動損益計算>
    T売  上  高 16,000千円   T売上高 16,000千円
    U売 上 原 価 10,000千円   U変動費 4,000千円
    (売上総利益) 6,000千円   (限界利益) 12,000千円
    V販売費及び管理費 5,000千円   V固定費 14,000千円
    (営業利益) 1,000千円   (営業利益) △2,000千円
  4. 事例Tで分かるように、全部損益計算は売上高から製造に関連する費用、販売に関連する費用、及び管理活動に関連する費用と言うように仕事の種類別に発生した費用を控除すると言う方式をとるために、企業全体としての総費用が販売量の推移と共にどのように動くかと言った費用の動きをつかむことができません。
    従って、利益管理では変動損益計算的な考え方(企業の操業度が変化した時それに応じて原価がどのように変化するか、さらに利益はどう変わるのかが掴める損益計算)を基礎的な前提とします。

     

2)損益分岐点分析方式による利益計画の基礎算式

  1. 損益分岐点売上高を達成する場合
     
    損益分岐点売上高= 固定費
    1- 変動費
    売上高

    損益分岐点売上高: 費用と収益がちょうど一致する売上高、即ち企業採算点の売上高

     

    変動費 限界利益率とも言います。限界利益とは売上高から変動費を控除した残額をいい、企業の固定費を回収して利益を生み出す貢献額を意味します。
    従って、限界利益率は企業固定費の回収を意味することになります。
    売上高

  2. 必要売上高を達成する場合
     
    必要売上高= 固定費+目標利益
    1- 変動費
    売上高

    <目標利益の概念>
    一般的には内部留保額、配当金、借入返済額、欠損金補填額等をもって目標(必要)利益としますが、企業を維持し存続するための必要資本利益率から目標利益達成点売上高を算出する場合もあります。

    目標利益達成点売上高= 固定費+必要資本利益率×固定的資本
    1−変動費率−必要資本利益率×変動的資本率
     
    変 動 費 率  = 変 動 費  
    売 上 高
     
    必要資本利益率  = 自己資本 危険料(注)  
    総 資 本 総 資 本
    (注)一般的には火災保険料プラスαが充てられます。
     
    変動的資本率  = 変動的資本  
    総 資 本
    (注)固定的資本とは、主として固定資産、変動的資本とは、主として流動資産を考えていただければよろしいです。

  3. 資本回収点売上高を達成する場合
     
    資本回収点売上高= 固定的資本
    1- 変動的資本
    売 上 高

 

3)損益分岐点分析手法の活用例

<支店を新たに開設したいが、採算はとれるか?>

A.新たに土地を購入する場合
1)投下資本の見積
 @ 土    地 ・・・ 30,000千円
 A 建    物 ・・・ 20,000千円
 B 設 備 造 作  ・・・ 10,000千円
 C 商  品  他 ・・・  8,000千円
 D 人  件  費 ・・・  9,000千円
 E 減価償却費、保険料、修繕費、固定資産税他・・・
     設備投資の15%程度、30,000千円×15%=4,500千円
 F 金 利 負 担  ・・・ 他人資本(借入金)の6%程度(返済期限6年)5,100千円
 G 元金年返済額 ・・・ 14,166千円(元利金等返済)
 H 限界利益率  ・・・ 現在の40%を維持する事を前提

2)現状と支店開設後の財務内容
                  (単位:千円)
項目\区分 現  状 支店開設後
必要売上高 230,000 347,330
変 動 費 138,000 208,398
限界利益 92,000 138,932
固 定 費 84,000 102,600
必要利益 8,000 36,332

以上より必要売上高で117,330千円の売上増が要請されます。従って新たに開設した支店の売上高が117,330千円ないと土地を購入して行う場合には破たんする可能性があります。
 

B.賃借する場合
1)投下資本の見積
 @ 家    賃 ・・・ 12,000千円
 A 人  件  費 ・・・  9,000千円
 B 設 備 造 作  ・・・ 10,000千円
 C 商  品  他 ・・・  8,000千円
 D 敷金、権利金、保証金、減価償却費、保険料他・・・
     10,000千円×18%=1,800千円
 E 金 利 負 担  ・・・ 借入金の6%程度(返済期限6年)2,484千円
 F 元金年返済額 ・・・ 6,800千円(元利金等返済)
 G 限界利益率  ・・・ 現在の40%を維持すると仮定

2)現状と支店開設後の財務内容
                  (単位:千円)
項目\区分 現  状 支店開設後
必要売上高 230,000 327,120
変 動 費 138,000 196,272
限界利益 92,000 130,848
固 定 費 84,000 109,248
必要利益 8,000 21,600

以上より必要売上高で97,120千円の売上増が要請されます。従って新たに開設した支店の売上高が97,120千円ないと賃借して行う場合には破たんする可能性があります。


 

 

利益計画

 
(1)利益計画の意義
 

利益計画とは、経営者がもっている経営理念や経営方針を基に、目標利益に関して期間計画を設定する手続きを意味します。ところで利益計画には、長期利益計画と短期利益計画とがあります。

1)長期利益計画
長期利益計画は、3年から5年の計画で、長期間にわたって安定した適正な利益を確保することが主眼とされるために目標利益も必要資本利益率でもって算出されるのが通常です。

2)短期利益計画
短期利益計画は1年間を想定する場合が多く、一応長期利益計画の制約を考慮しなければなりませんが、目前の諸条件(例えば、繰越欠損金の有効期限が迫っているので、来期は当該欠損金を補填するだけの十分な利益を出す必要があるなど)を達成すべき利益額に基づいて編成されるのが普通です。

 

(2)短期利益計画のたて方
損益分岐点分析と言う手法を使って利益計画を立てる場合の留意事項は、以下の通りです。

1)売上高の計画
 

  1. 基本的には当該企業の必要売上高として基本算式によって求めた額を季節指数で12ヶ月に按分する方法を取ります。
  2. 尚、当該業種の業界事情や当該企業の成長率、あるいは成長戦略(市場浸透戦略、新市場開拓戦略、新商品開発戦略、多角化戦略)等から見た必要売上高の達成度の度合いを見て、調整することもあります。
  3. ところで、必要売上高を算出する場合の限界利益率については3年間の平均値をとるのが普通ですが、技術革新や仕入先変更、あるいは大量生産等による変動費節減が予想される場合には、それに応じた高めの設定をすることになります。

 

2)変動費計画
 

  1. 変動費は売上高の増減に応じて、一定期間における総額が比例的に変動する費用ですから売上高が決定したら、これに変動費率を生じて計算することになります。
  2. 1 によって計算した額が変動費の総額ですから、これを材料費、外注費、消耗品費等の科目に過去3年間の実績指数で割り振り、これを売上高指数で12ヶ月に按分する事になります。
  3. 変動費計画で留意しなければならないのが棚卸分の増減調整です。月々の月末棚卸について、概算棚卸率を考慮して、棚卸分の増減調整を行うのが通常の方法です。

 

3)固定費計画
 

  1. 人件費についてですが、役員報酬、従業員給与、賞与、福利厚生費等について、新規採用予定数、報酬アップなどを加味しながら、許容支給総額を決定します。
  2. 設備投資による固定費(減価償却費、修繕費、保険料、固定資産税、支払利息等)を見積るわけですが、この場合従来の設備投資と新規事業に伴う設備資産(投下資本利益率の高い設備投資を前提とする)について、必要固定費の総額を見積ることになります。
  3. 上記の 1,2 の見積り算定が終わった後に、売上に関連する接待交際費、広告宣伝費や借入金利、その他の固定費を対前年実績との比較において見積り、これらの総額を各科目ごとにそれぞれ単純按分することになります。

 

利益統制

損益分岐点分析という方法で、利益計画を立てた場合、最後の手続が利益統制(利益差異分析と計画の見直し)です。
利益統制のポイントは
@目標売上高、目標限界利益率(目標変動費)、目標固定費と実績売上高、実績限界利益率(実績変動費)、実績固定費とを毎月比較してその差異を検討し、分析の結果に応じて、利益計画の見直しを行うと言うことです。達成率が90%以下(もちろん、達成努力の問題もありますが)となるようでは、計画の下方修正の見直しも考えるべきです。

A月次利益管理表は以下の通りになります。この月次利益管理表を使って、各項目の利益差異分析をすることになります。

a 計 画 b 実 績 達 成 率
b/a×100
金 額 構成比 金 額 構成比
売上高          




材料費          
外注費          
消耗品費          
その他変動費          
合計          
限界利益          




人件費          
広告宣伝費          
接待交際費          
減価償却費          
保険料          
租税公課          
支払利息          
その他の固定費          
合計          
経常利益          


 

資金管理ってなに?

 
(1)資金管理の意義
資金管理とは、資金計画と資金統制をいいます。

1)資金計画
資金計画とは次の将来の一期間における収入と支出を計画することを言います。収入には、経常収入(営業収入と営業外収入を言う)と経常外収入(固定資産の売却収入や増資による収入を言う)とがあり、支出には経常支出(営業支出と営業外支出を言う)と経常外支出(法人税等の支払、配当金の支払、役員賞与の支払、借入金の返済等を言う)とがあります。

2)資金統制
資金統制とは、資金計画の諸収入、諸支出を実現するために、収支(経理)の担当者、担当部門を指揮監督することと、資金計画の諸収入、諸支出が実現されたかどうかを検討することを言います。
 

(2)資金の内容
資金管理でいう資金には、運転資金と設備資金の両者があります。従って、運転資金と設備資金の両者について計画と統制を行うのが資金管理です。

1)運転資金
運転資金とは、企業活動によって生ずる資金であり、また企業活動に必要な資金を言います。いわゆる日常の生産や販売等の業務活動に伴い必要となる業務資金の事を言います。

2)設備資金
設備資金とは、将来の相当長期間にわたる経済的効果の実現を期待して、使用する機械等の取替、新導入、あるいは工場の拡張、土地の取得のための資金を言います。投資決定は企業にとって特に重要な戦略的意思決定であるため、設備資金の調達と運用は資金管理の重要なポイントとなります。
 

 

損益と資金の違い

勘定合って銭足らず(損益計算書では利益が出ているが、資金不足のために常に資金繰りの追われているケースを言う)とか、勘定合わず銭足る(損益が管理されず、資金の入と出のみを押さえているケース)という言葉がありますが、これは、損益計算書上の損益と資金とに違いがあるからです。
従って、利益が出ていれば、資金も大丈夫とか、売上が上がっていれば、当然資金もついてくるといった単純な考え方では経営者失格といわなければなりません。
 
(1)収益と収入の違い
1)収益の計上
損益計算上、収益は原則として、商・製品を販売(サービス業は、サービスの提供)したときに売上収益として計上(営業活動の形態により、営業収益と営業外収益に区別)します。
つまり金銭の収入にかかわらず、掛売上だろうが、手形売上だろうが、収益として計上されます。
 
損 益 計 算
  売掛収益
手形収益
未収収益
固定資産売却益

2)収入の計上
資金計算上、収入は金銭の収入をもって計上します。従って、掛売上の場合、掛金の回収をもって収入に計上されるし、手形売上の場合、手形の期日決済をもって収入に計上されます。
つまり、現金、預金といった流動資金の受取をもって収入に計上します。

資 金 計 算
  売掛金回収
手形期日決済
未収収益の回収
固定資産の譲渡価額

3)収入のない収益
以上より、収益と収入の違いは一言でいうと、収入のない収益があるということです。このような収入のない収益としては、売掛金として残っている売上、期日末決済の手形売上、未収になっている未収金や営業外収益等があります。


 

(2)費用と支出の違い

1)費用の計上
損益計算上、費用は原則として価値の犠牲(費用の発生)をもって、費用に計上します。
つまり、金銭の支出にかかわらず、掛仕入だろうが、手形仕入だろうがあるいは、償却資産の価値の減少に伴って発生する費用(減価償却費と言う)も計上します。

損 益 計 算
掛仕入
手形仕入
未払費用
減価償却費
賞与引当金繰入
 

2)支出の計上
資金計算上、支出は金銭の支出をもって計上します。従って、買掛金の支払、支払手形の決済、未払費用の支払、未払金の支払、法人税等の支払があった時に計上されます。
つまり、現金、預金といった流動資金の企業外への流出をもって、支出に計上します。
 

資 金 計 算
掛支払
手形決済
未払金支払
未払費用支払
土地の購入
法人税等の支払
 

3)支出のない費用
以上より、支出と費用の違いは一言でいうと支出のない費用があるということです。
このような、支出のない費用としては、土地や設備の購入、掛仕入、手形仕入、未払金等の計上があります。
 

 

損益と資金の違いまとめ

項  目 損 益 計 算 資 金 計 算
1) 収益の計上時期と収入時期とのずれ        
@ 掛売上や手形売上の場合 収益として計上される 回収または決済があるまでは資金化されない
A 前受金の場合 販売前に受取るから収益は発生しない 前受金として受取るため収入は発生する
2) 費用の計上時期と支出時期のズレ        
@ 掛仕入や手形仕入の場合 費用として計上される 支払または決済があるまでは支出に計上されない
A 減価償却費や退職給与引当金繰入れの場合 費用として計上される 売却資産の取得の時や従業員が退職した時に支出に計上する
3) 損益計算に現れない収入
土地や建物等の固定資産を売却した場合
売却価格と取得価格との差額が収益として計上される 売却価額(未収金部分を除く)そのものが収入として計上される
4) 損益計算に現れない支出        
@ 固定資産の取得の場合 資産に計上され、費用に計上されない 固定資産を取得した時に支出として計上する
A 配当金、役員賞与を支払った場合 利益処分として計上され、費用に計上されない 配当金、役員賞与を支払った時に支出として計上する

 

資金のつかみ方

損益と資金が食い違うということは、利益の出ていない赤字会社はもちろんのこと、安定した経営を続けている企業においても、常に資金に目を向けて経営していかなければならないということが理解できたと思います。
そこで、損益の状況から資金の動きをどのようにして捉えれば良いのかを損益計算書や貸借対照表の数値との関連から見ていきたいと思います。
 
(1)売上高と資金
商製品の販売による売上高のうち、その期間にいくらの金額が資金化されたかを見るためには、現金預金による売上と、その他債権による売上とを区分し、債権による売上についてはその期間における資金回収額を見れば良いことになります。
つまり、

 

現金預金売上額 年度初め売上債権 年度末売上債権 販売に関する資金の収入

 

(2)売上原価と資金
次に、売上原価の場合には売上高とは逆で商製品仕入高のうち資金の支払いに結び付いていないものは、いくらかを見ていけばよいわけです。

 

現金預金仕入額 年度初め仕入債権 年度末仕入債権 商製品仕入に関する資金の支払

 

(3)棚卸資産と資金
商品、製品、原材料等の在庫、いわゆる棚卸資産は現金が姿を変えたものに他なりません。ですから、これら棚卸資産の増減は、資金の増減そのものだと考えることができます。
従って、

@在庫が増えた場合→資金が在庫という姿で寝ている→在庫を積むために資金を支出
A在庫が減った場合→寝ていた資金が回収された→在庫が減っただけの資金収入

以上より期首、期末の差額を計算すれば良いことになります。
つまり

@年度末棚卸資産−年度初め棚卸資産>0 →支出(資金の持ち出し)
A年度末棚卸資産−年度初め棚卸資産<0 →収入(資金の回収)

 

(4)販売費及び一般管理費と資金
販売費及び一般管理費のうち、現金支払のない費用、すなわち減価償却費や貸倒引当金のような諸引当金の繰入額は費用の計上はあっても、支出はないので資金としては加算されます。(資金の増加)

 

(5)営業外収益項目と資金
営業外収益項目(受取利息、雑収入等)は、原則として収益と収入にズレはないと考えられますが、未収収益や前受収益は調整を必要とします。

 

営業外収益(現金収入) 前受収益 未収収益 営業外収益に関する資金の収入

 

(6)営業外費用項目と資金
営業外費用項目(支払利息、雑損失等)は、原則として費用と支出のズレはないと考えられますが、前払費用や未払費用については、調整を必要とします。
すなわち、

 

営業外費用(現金支出) 前払費用 未払費用 営業外費用に関する資金の支払

 

(7)特別利益項目と資金
例えば、器具備品の売却益を例にあげれば、売却価額と取得価額の差額が収益として計上されますが、資金面からみると、売却価額そのものが(未収金を除く)収入です。

 

器具備品売却益 売却価額 特別利益計上額 償却資産の売却に関する資金の収入

(注)未収金がある場合には、未収金の回収ができた日に資金の収入の計上が行われます。

 

(8)特別損失項目と資金
例えば、土地を売却した場合、土地売却損として特別損失に費用として計上されますが、資金の面から見ると支出のない費用の計上であり、実際は土地売却額だけ、資金の収入があります。
すなわち、

 

土地売却損 売却価額 特別損失計上額 だけ資金の増加となります。

 

 

資金のチェックポイント

(1)運転資金のチェックポイント
1)運転資金は、日常の生産や販売などの業務活動に伴い必要となる業務資金のことですから、売上債権(売掛金、受取手形等)や棚卸資産から調達する事になります。従って運転資金のチェックポイントは、売上債権や棚卸資産及び買入債務の回転期間が大きなウェイトをしめる事になります。

2)上記1)を基礎として運転資金のチェックポイントを上げてみると以下のようになります。
 @自社の前期と当期のそれぞれの回転期間を比較してみます。
 A同時に、同規模同業種他企業と比較し、自社の回転期間のレベルを知ります。
 B上記@、Aの結果、回転期間が長引いていれば借入金依存度が高まるので、短くするための努力が必要です。

<事例>

前 期 当 期 同業他社
(A)売上債権 58日 60日 50日
(B)棚卸資産 30日 30日 25日
(C)買入債券 50日 50日 45日

※借入金依存(前 期) (A)+(B)-(C)=38日
      (当 期) (A)+(B)-(C)=40日
      (同業社) (A)+(B)-(C)=30日
 従って前期に比較して当期は借入依存度がさらに強くなったと言えます。

C売上債権の回転期間は短縮すればするほど望ましいわけですが棚卸資産(商品等)の回転期間は短縮すればするほど良いとは言い切れません。回転期間だけの効率を重視するあまり、品切れをおこすようでは困ります。「迅速な回転」と「豊富な品揃え」というニ律背反的な要素を満足させなければならない難しい問題をかかえています。
従って、商品部門毎の「売上高」「売上高成長率」「売上高構成比」「粗利益率」「回転期間」といった総合的な要素を充分に把握した上で適正在庫を検討しなければなりません。
その具体的な方法のひとつとして、「粗利益率」と「回転期間」によるポートフォリオ分析があります。

<事例>


A商品(粗利益,回転高)花形商品

B商品(粗利益,回転低)金のなる木

C商品(粗利益,回転低)負け犬

D商品(粗利益,回転高)問題児

 

 

以上より、負け犬であるC商品の販売方法の変更や整理をし、粗利が高く、回収が早くなされるA商品(花形商品)の在庫量を増やすべきです。

 

(2)設備資金のチェックポイント
1)設備資金は長期にわたって寝る資産(固定資産)を取得するために使用する資金です。従って返済する必要のない自己資本や、返済期間の長い長期借入金で賄うのが原則です。なお、調達した借入金の返済は税引後利益や減価償却費で行うのが原則です。

2)上記1)を基礎として、設備資金のチェックポイントをあげれば以下のようになります。
@自社の前期と当期の自己資本比率、固定比率、固定長期適合率を比較してみる。
A同時に同規模同業種他企業と比較し、自社の自己資本比率、固定比率、固定長期適合率のレベルを知る。
B上記@、Aの結果、自己資本比率()は高ければ高いほど、また固定比率()、固定長期適合率()は低ければ低いほど設備投資に無理が無いことを示します。

 

 


TOP


Copyright (C) 2003 b-post.com. All Rights Reserved.