法人設立の手続きと留意点について

1.法人設立の時期

法人税法という税務の視点で考えれば、法人設立は法人所得が最も平準化する時期、即ち、事業開始の日から決算日までの月数が12か月に近づく時期がベストです。

ただし、法人成りの場合、個人事業者の所得税や消費税等のコスト負担もあるので、個人事業者の廃止時期による税負担を考慮する必要があります。

2.法人設立手続きの留意点

法人にもいろんな種類がありますが、一般的に営利事業を目的として運営し、かつ旧有限会社のように運営上の手続きを簡略化できる譲渡制限株式会社を前提に説明します。なを、会社の設立にはだいたい2〜3週間を要しますので、この設立に要する期間を考慮して慎重に対応しましょう。

商号 会社法では、類似商号についての規制はなくなりましたが、同一住所で同一商号の登記は認められませんので、念のため使用したい商号について前もって法務局で確認することが必要です。
事業目的 類似商号の規制がなくなった事によって、事業目的も包括的表現が認められるようになりましたが、適法性・営利性・具体性・明確性等が必要ですので、事業目的はもちろんの事、将来新たに始める可能性のある事業目的も織り込んで、文章内容について法務局に確認することが必要です。
資本金 会社法では最低資本金の制度はなくなりましたので、1円でも良いのですが、基本は法人の当面の運転資金を賄える事が前提になります。従って、法人設立後半年程度の運転資金を想定して決定しましょう。一般的には、法人の設立規模にも左右されますが300万円〜500万円程度です。
株主 人数に制限はありません。資本金の額(1人当たりの出資額の負担金)にもよりますが、譲渡制限株式会社が前提ですから、親族株主で1人〜3人ぐらいではないでしょうか。
取締役 譲渡制限株式会社では、取締役は1人でもかまいません。また任期は、定款より10年まで可能です。なを、取締役会を開くかどうかは任意なので、意思決定機関は株主総会になります。

3.会社設立後に必要な届出について

市町村役場へは、事業開始申告書を提出することになっています。
開業したらすみやかに提出しましょう。

税務署 会社設立から2か月以内に法人設立届書のほか税務に関する各種の届け出(青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書、源泉所得税の納期特例承認申請書他)が必要です。提出する申請書類によって、提出期限が異なるので留意しましょう。
県・市 鹿児島県は会社設立後10日以内
鹿屋市は会社設立後15日以内に
法人設立届出書を提出します。
社会保険事務所 会社は、従業員を1名以上雇用したら健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりませんので、これらの保険に関する新規適用届及び新規適用事業所現況書を提出します。
労働基準監督署 会社を設立し、従業員を雇用する場合には、労働保険保険関係成立届(雇用した日から10日以内)、概算保険料申告書(保険関係成立の日から50日以内)等を提出しなければなりません。
公共職業安定所 雇用保険適用事業所設置届(適用事業所となった日から10日以内)、労働保険保険関係成立届(労働保険関係が成立した日から10日以内)等の届出が必要です。この届出がないと、従業員が退職(失業)した場合に一定の失業給付を受けられません。
その他 法人で事業を営むにあたって、当局の許認可を必要とする業態(飲食店、喫茶店、食品製造・販売業、古物商、旅行業、理・美容業、旅館業、建設業、宅地建物取引業、酒類製造・販売業等)については関係当局に許可の申請を行います。

4.法人設立のスケジュール

一般的な法人設立のスケジュールは以下のようになります。

  1. 法人の概要を決める
  2. 法務局で商号調査と事業目的を確認する
  3. 法人の代表印を注文する
  4. 定款を作成する
  5. 定款認証を受ける
  6. 金融機関へ資本金の払込みをする
  7. 法人設立に必要な書類を作成する
  8. 法務局へ登記申請する
  9. 会社設立の完了(法務局へ申請してから1〜5日程度で会社の登記簿謄本が取得できます)
  10. 税務署や社会保険事務所等に、法人設立の届出書類を提出します
  11. 個人事業からの法人成りの場合は、
    廃止期間に伴う所得と法人への引継ぎ資産を確定するために、
    個人事業の廃止に伴う決算を行います。
    また、個人事業の廃止に伴う届け出を所轄税務署に行う共に、
    個人事業廃止に伴う所得税の確定申告を行う(翌年3月15日まで) 。

 

「創業を決意するまでの準備期間」へ戻る