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33:2005/2

<有利な販売取引先、販売商品を見抜く視点について>

T.はじめに
 企業販売の目的を一言で言えば「利益と資金の追求」であり、そのために原資となる限界利益をいかに増大させていくかです。即ち、人・物・金・情報といった経営資源を有効に活用して、高付加価値経営を実現する事にほかなりません。しかし、今日では、売上の伸び悩み、価格引下げ要因等により、思うような付加価値を稼げないのが、実情です。そこで今回は、販売努力を注ぐべき取引先を見抜く視点、販売努力を注ぐべき取引商品を見抜く視点について見る事にします。

(1)販売努力を注ぐべき取引先を見抜く視点
 取引先のうち月間売上高上位5社とこれらの取引先に対する主な商品別売上高、限界利益率、回収率、回収期間、回収成績、回収資本限界利益率が表1のようになったとします。
  −表1−

商品名

取引先

商品別売上高 限界
利益率
(%)
回収率
(%)
回収期間
(日)
回収成績
(%)
回収
資本限界
利益率
(%)
甲品
(万円)
乙品
(万円)
丙品
(万円)
丁品
(万円)
合計
(万円)
A社 70 30 60 40 200 20 80 150 53 10.6
B社 50 20 30 80 180 17 95 135 70 11.9
C社 30 60 20 40 150 16 98 115 85 13.6
D社 10 100 5 5 120 22 85 120 71 15.6
E社 20 35 35 10 100 25 100 95 105 26.3

(注1)取引先については月間売上高が多い順に並べてある。
(注2)限界利益率は取引先毎の「限界利益/売上高」である。
(注3)回収率は得意先毎の「回収高/請求額」である。
(注4)回収期間は売上げてから現金化されるまでの得意先毎の平均回収期間である。
(注5)回収成績は得意先毎の「回収率/回収期間」である。
(注6)回収資本限界利益率は「限界利益率×回収成績」である。

 上記表1から限界利益率が最も高くかつ回収資本限界利益率も高いのがE社であり、ついてD社が有利で、B社は売上高は上位から2番目だが利益率も低く資金回収率も思わしくないと言えます。つまり、大切な運転資本をB社に思うように利用されていると考えるべきです。以上から、最も販売努力を注ぐべき取引先は、E社・D社であり、この2社に対する売上高を増やすための営業戦略を工夫すべきです。

(2)販売努力を注ぐべき商品を見抜く視点
 当社の主な取扱商品の月間売上高、粗利益率、商品回収率、交差主義比率が表2のようであったとします。
  −表2−

区分

商品

月間売上高
(万円)
売上割合
(%)
粗利益率
(%)
商品回転率
(%)
交差主義比率
(%)
A品 190 19 20 8 1.6
B品 250 25 18 10 1.8
C品 160 16 22 6 1.32
D品 300 30 16 5 0.8
E品 100 10 12 7 0.84
合計 1,000 100 - - -

(注1)売上割合は、各商品毎の「月間売上高/月間売上高合計」の割合である。
(注2)粗利益率は、各商品毎の「粗利益(又は限界利益)/売上高」の割合である。
(注3)商品回収率は、各商品毎の「売上高/(期首在庫+期末在庫)÷2」である。
(注4)交差主義率は、「粗利益率(又は限界利益率)×商品回転率」である。

 上記表2から、当社にとって最も資本稼動率の高い商品は、交差主義比率の最も高いB品であり、ついで、A品、C品と続きます。なお、D品は、売上割合では、トップの位置にありますが、粗利益率は最下位から2番目であり、商品回転率にいたっては、最下位です。つまり、商品の資本効率いう点からは、今後を期待できない商品であると言えます。従って当社が営業努力を注ぐべき商品は、B品、A品、C品であり、売上割合の低いC品については、特に営業戦略を工夫すべきです。

 

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