経営革新の具体的事例


A.新商品の開発又は生産

  1. S社は、金属熱処理の受注と熱加工装置の設計・製造を行ってきたが、金属繊維技術を社員に習得させ、新たに大幅な省エネと生産性向上を実現する金属不織布製造試作装置を開発し、市販品を製作した。また、アルミ繊維製の金属不織布がもつ防音材・騒音防止剤として 特長をさらに検討した上で、より高性能で実用的なものに改良し、効率的なリサイクル事業を展開する。
  2. LED電光表示機を中心として電子機器の企画・製造販売を行ってきたT社は新たな事業分野として、福祉・介護向けテレビ端末画像・音声双方向通信システムの開発に取り組んでおり、安価 ・高利便性を重視することはもとより、今後の技術革新を見込んだサーバシステムを開発し、売上の増加を見込んでいる。
  3. 厨房機器の製造販売を行っているN社は、自社のアイディアにより学校給食の作業員に対する加重労働と破損率の大幅低下を実現することが可能となったが、今後はより短時間での効率的に後片づけをするための工夫が もとめられた。従来製品は特殊なカゴの溝に沿って食器を整然と並べる必要があり、これは給食センターにおける洗浄を自動化するために不可欠なプロセスであり、それを児童の作業に依存していたが、これが時間を要していた。この手間を省くために新製品の開発を行い、試作品を完成させた。この試作品を基に、展示会に参加し、大きな反響と高い評価を得ることが できた。
  4. ポリエチレンフィルム製造業者のM社は、おにぎり包装フィルムを製造しているが、今般直巻きおにぎり用包装フィルムを開発し、フィルム機械を導入した。当該フィルムにより、直巻きのしっとりした味が保存されることが取引先のニーズにマッチし売上増大につながっている。

B.新役務の開発又は提供

  1. リサイクルなどの環境に関する広告企業を行っているT社は、地球環境の保護をさらに推進するため、産業廃棄物である鶏糞を活用した土壌改良及び水質浄化セラミックスの開発をし、市場に大きなインパクトを与えた。無農薬・有機肥料栽培の農家・農協 、地方自治体、ファミリーレストラン等の新たな顧客が見込まれている。
  2. 中古建設機械の販売・リースを行っているP社は、従来の広大な場所を確保し、実際の中古建設機械を揃えたオークションは莫大なコストがかかるため、年に数回の開催しか出来なかったが、インターネットオークションのシステムを開発し、中古建機の査定人員を増員することにより、安価・効率的に販売出来るようになり、経営面の向上につながっている。
  3. 引越し業者のB社は、環境にやさしい低燃費で二酸化炭素排出量の少ない新型トラックを導入した。引越し業界でこのような低燃費のトラックを利用している例は非常に少なく、環境対策を行っているトラック業者としてPRすることにより、地域の知名度を高め、競争力の向上を図ることによりマスコミにおいても取り上げられ、売上増大につながっている。
  4. ガソリンスタンド業者のH社は、車検制度の規制緩和を受け、スタンドにおいて車検を行える免許を取得し、車検工場を備えたスタンドを新設した。このような取り組みは、当該地域では、革新的なものであり、車検による売上はまだ少ないながら車検も行えることにより、顧客ニーズに応えることが でき安定した売上を確保している。

C.商品の新たな生産又は販売の方式の導入

  1. 鋼材加工業者のT社は、レーザー加工機の導入により、これまでより高精度な高付加価値製品の生産が可能となり、製品の差別化を図り販売量を拡大し、また、処理速度が早いため能率 良く、コスト削減ができる。販売量の拡大に対応するため、従来の売上処理等をデータベース化し、営業にはノートパソコンを携帯させ顧客先でのデータ活用を可能にすることで、合理化と顧客満足度の 向上を実現している。
  2. 印刷業者のW社は従来事業から脱却し、データベースの構築技術による自動組版システムを導入し、組版のルールやフォント、行間などが異なる出版物もプログラミングにより自動レイアウトが可能となり、大量ページの処理にも対応できた。また、WEB編集システムを構築し、データ入稿や校正可能にすれば、原稿の受け渡しに費やされる時間・費用等が合理化でき、売上率の増加につながっている。
  3. 金属プレス加工業者のA社は、親会社から従来の納期より更に短納期の要請を受けたため、生産期間を従来に比べ10%短縮できる最新鋭のプレス機を導入した。本プレス機の導入は、同事業者の所在県においては、業界内でも画期的なものであり、この 機械の導入により、短納期化が図られ親会社の信頼も増し、安定した受注を得ることができている。
  4. K社は新商品がほぼ完成し特許も取得できたので、使用製品によって改良点を把握し、仕様を完成させた。また、生ゴミを堆肥化リサイクルする小型装置の開発が急務となっているため、既存機種をコンパクト化した装置 を開発し、他社との差別化を図り売上利益を 向上させることができた。

D.役務の新たな提供方式の導入とその他の新たな事業活動

  1. 工事現場の交通誘導を主に行っている警備業者のT社は、新たに福祉コミュニケーションシステムを導入し、緊急即時通報サービスを開始し、地域の高齢者支援活動組織の業務請負や、企業との業務提携による福利厚生の福祉事業へ参入した。また、緊急通報の付帯サービスとして定期訪問や生活相談等を開始することで会員情報を蓄積し、サービス内容の充実を図っている。

  2. カーエアコンの取り付け・修理業のH社は、大口顧客であったトラックへのエアコン搭載・修理需要が大きく減少したため、ピット式の多目的車検機を開発した。この車検機により自動車1台を 検査するのに必要な人員を3人に減らし、一度の 検査に必要な時間も通常の60分から15分程度に短縮するとともに、費用も通常の4分の1程度にすることができた。この製品をGSに販売したところ、順調に車検台数が増加し、新聞紙上にも取り上げられた。今後はタイヤ販売店やカー用品店等にも行うとともに、メンテナンス技術者を増強しながら、新規顧客獲得を図っている。

  3. ファミリーレストラン・チェーンを経営するD社では、従来、それぞれの店舗が食材の仕入れから事前の下ごしらえまで個別に行い、顧客からの注文を受けて調理するシステムをとっていた。しかし、まとめ買いによる一括仕入の方がコスト的に安く、また、下ごしらえも調理人が自ら行うより集中処理した方が効率的で、顧客の待ち時間短縮によるサービス改善にもつながると判断し、セントラルキッチンを設置して半調理した食材をそれぞれの店舗に供給する方式に変更した。これにより、仕入コストの削減 が可能となったほか、顧客へのサービス改善が図られ、客席回転率も高まって売上の増加を達成している。

  4. 一般製材業のE社は、これまで商社から外材の原木を仕入れていたが、稼動していた切削ラインは一定の形質、径級に対応したものであるため、原木がコスト高となり、採算は悪化していた。このため、同社では従来の切削ラインを見直し、異業種である木工機械メーカーとの共同により、ツインバンドソーによる曲がり材の加工システム(高歩留まり)を開発・導入するとともに、生産方式に基づいた規模、工場のレイアウトの配置見直しを図った。これにより、地域における様々な径級の原木や曲がり材についても 加工が可能となり、原木仕入れコストの削減、製品の売上の確保を達成し、市況の悪化に耐えられる企業体質に改善することができた。